死の先に待っていた新たな世界
第25話


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 見上げる空は、気持ちのいいくらいの青。
 雲ひとつない、こんな日に出かけるものいいものだ。
 馬に乗りながら、上下する視界もまたいい。
 ただし、乗りなれていればいいが、そうでないと辛いもので。
「アレス、ケツが痛いんだけど」
「サイト君、まだ三十分は乗ってないとならないから我慢しないと」
「わかってるんだけどさ、俺、馬に乗りなれてないし」
 俺の後ろに乗るサイトが、そう言いながら少し腰を浮かしていた。
 腰を浮かすのはいいが、俺の肩にしがみ付かれると体勢が崩れる。
 何とかバランスを取りながら俺は馬を歩かせていた。
「サイト、この前、馬に乗ったじゃない?」
 隣で馬に乗るルイズが、サイトに尋ねる。
「この前、戦争に行くのがはじめてだったんだよ」
「ふーん。前に話しは聞いたけど、サイトの世界って余程便利なのね」
「まあな。馬の代わりになる乗り物が多いんだ。
 自転車、バイク、自動車、電車、飛行機とな。
 自転車はともかく、あとは全部馬より早く移動できるんだ」
「いまいち、イメージが湧かないわ」
 疑問だらけだと言う表情のルイズ。
 まあ、説明されても見たことなければ分からないだろう。
「マスターも、前世はそう言うのに乗ってたのよね?」
「まあね。自転車は社会人になってから乗ってなくて。自動車って言う乗り物ばかりだったよ。
 最高速度は馬の三倍。時速百八十リーグくらいだね」
「うそ! 火竜並の早さよ!」
 ルイズが数値を聞いて驚く。
 それもそうだろう。
 こちらの世界での竜でも、時速二百キロから三百キロくらいだ。
 火竜だと確か二百キロも速度が出ない。
「まあ、あくまで最高速度。通常は規制が掛かっているから、平均すると五十リーグくらいかな?」
「それでも、馬と同じくらいなのね。
 しかも人の力で創られた機械なのが凄いわ」
 ルイズは感心したように言う。
 前にも少しは話したが、具体的に数値で言った事はない。
「なあなあ、アレス。さっきからリーグとか言うけど、なんだそれ?」
「こっちの距離の単位だよ」
 サント、メイル、リーグ。
 ほとんどが、俺達の世界と呼び方が違うだけで、だいたいが同じである。
 それを説明してあげると、サイトも納得したようだ。
「結構、俺らの世界と共通点があるんだな」
「ゼロ戦の件もあるし、案外向こうから事故でこっちに来ている人間が何人かいるのかもね。貴族の考え方も、中世ヨーロッパとかなり似てるし、どういう訳か地形もヨーロッパそっくりだから」
 浮遊大陸とは言え、アルビオンの名も昔のイギリスの国名だ。
 白い国の意味もほとんど通じる。
 帝政ゲルマニアも、古代ヨーロッパの地名と位置もだいたい同じか。
「貴族の考え方は確かに、ヨーロッパっぽいかもな。
 でも、俺あまり世界史が得意じゃないんだ」
「サイト君、こっちの世界では知らなくても問題ないよ。
 帰れたらしっかりと勉強するといいさ」
「そういや向こうでは結構、大変なことになってるんだろうな……」
 サイトはそう言うと暗い表情をする。
 高校生が突然消えたんだ。すでにサイトもこっちに来て一月以上が経つ。
 向こうでもそろそろ事件になっていてもおかしくない。
「ごめんなさい」
 ルイズがそんなサイトを見て言う。
 責任感が強いルイズにはこの話はきつかったか。
「いや、謝られてもな。そのサモンなんとかって魔法、どんなのが呼び出されるのかわかんないんだろ?」
「そうだけど……」
「じゃあ、ルイズを責めても仕方ないって」
 明るく言うサイト。
 こう能天気と言うか、楽天家というか、こういう性格だと適応性も高くていい。
 事実、こっちの生活にもだいぶ慣れて来たようだし。
「ノルンの家族とかは?」
 ふと気になって、ノルンに尋ねてみた。
「いるけど、サイトに比べればまだいい方よ。あたしはその気になれば帰れるもの。
 今は、マスターのところが居心地いいし、死ぬまでマスターと一緒だから。
 それに、ちゃんとあたしの場合は使い魔になってくるって言ってるし」
「それは興味深いわね。わたし達はただ呼び出すだけだけど、呼び出される方って知らないから」
 ルイズとしても呼び出す側だ。俺も同じだが。
 ノルンのように呼び出される側の事は俺たちじゃあまり知らないのだ。
「家族でも使い魔になった人はいたから。
 あたしのお兄ちゃんも使い魔として随分前に出て行ったわ。
 これで俺も自由だとか言いながら……。部族の長候補だったから担い手がいなくなったってみんな嘆いていたけど、面倒が嫌いだったお兄ちゃんは喜んで使い魔になったっけ」
 つい、喜んで使い魔になったと言うことに突っ込みを入れようかと思った。
 場合によっては使い魔になる方がいいのかもしれない。
 平和な時なら、守る必要はほとんど無い上に、衣食住は確保できるんだ。
「そ、そうなんだ……。
 まあ、でも、サモン・サーヴァント、やっぱり勝手な魔法だね。
 少なくとも契約解除くらい出来ないと、サイト君みたいに呼び出されたものが困る場合もあるよ」
「わたしは今まで、そんなことを考えた事なかったわ。
 サイトの事がなければ未だに、呼び出すのが当たり前だったかも知れない」
 まあ、大抵が呼び出すのがこの世界では当たり前だろう。
 始祖ブリミルがどういうつもりで創った魔法だか分からないが……。
 本当に呼び出すだけだったのだろうか?
「あ、でも、拒否も出来るのよ?
 あたし達の場合は、拒否すると、他のフェアリーの前に鏡が行くし」
「そうなんだ?」
 意外な事実だった。
 まあ、でも光の鏡自体はやはり消えないようだな。
「まあ、今はそれは置いておこう。
 ほら、話してたからもうすぐ王都だ」
 俺がそう言って先を指す。
 トリスティン城が、青空にバックに堂々と聳え立っていた。
 トリスティン城下町は、上流の平民や貴族が多数住んでいる場所でもある。
 また、商業もここがトリスティンでは最も栄えている。
 もちろん品揃えは豊富だ。
「なんか、下町って雰囲気だな」
「確かにね」
 王都のメインストリート、ブルドンネ街を歩きながら話す。
「どう? トリスティンの王都は」
 ルイズがやや得意気に言う。
 自分の国の首都なのだ。
 少し得意気にいいたくなるものだ。
「賑やかでいいな。けど、ここが一番大きいの街なのか?」
 辺りを見回すサイトがそう尋ねる。
 悪気はないんだろうけど、その言い方は住んでいる人間からすると少し気になる言い方だ。
「そうよ。何か不満でもあるの?」
「あ、いや、俺の世界だとうちの駅前くらい? まあ地元の街と同じくらいに感じるからさ」
「ねえ、アレス。サイトが言っていることは本当なの?」
「ん? そうだね。僕が前世で住んでた街と同じくらいだから、サイト君の言うことは間違ってないよ。
 何せ、僕達が住んでいた首都の人口は千万人と言われてるんだ」
「千万人!」
 ルイズが大声を上げて驚いた。
 この世界の王都はせいぜい三十万から五十万くらいだ。
 それが一千万となれば、かなりの規模の街になる。
「わたしってとんでもない世界の人間を召還しちゃったのね」
「とんでもなくないんだけどさ。まあ、いろんな世界があるんだってことだ」
「ホント、世界は広いってことね」
 ルイズにとっては世界が広がるため、いいのかもしれない。
 この世界の常識に縛られなければ、可能性はまた無限大だ。
 他を知ることは己を知ることに繋がるし、また己を知れば知らないことも取り入れられるものだ。
「で、今はどこに向かってるんだ?」
「まあ歩いているだけだよね?」
「そうね……。まあ、わたしは服とかアクセサリーにも興味あるし」
「じゃあ、まずはそこに言ってみようか」
 俺たちはとりあえず、ルイズの服を見に行くのだった。
 貴族向けの服と言うのは、まあ派手なものが多い。
 女性向けとなると、その装飾の数が半端ではなかった。
 しかし、普段の服装から考えると、派手すぎるのが多いもので……。
「あそこまで派手にする必要ないわよね」
 と言いながらルイズは結局何も買わなかった。
「まあ、あそこにあったのはどうやらパーティーとかのが多かったみたいだし」
「ねえ、マスター。あたしの服とかはやっぱり売ってないのよね?」 
 ノルンが周りを見ながら聞いてくる。
 フェアリーと言えど、女の子。
 ファッションには気になるのだろう。
「さすがに、売ってないね。何なら仕立ててもらう? そのくらい出来るけど」
「うーん、じゃあお願い。あたしずっとこの服だし」
 そう言いながらノルンは自分の服を摘んだ。
「そう言えば、ノルンって洗濯どうしてるの?」
 ルイズがノルンを見ながら言う。
 確かに、俺もノルンが着替えてたりした姿は見たことない。と言うか着替えを見たらそれはそれで問題か。
 ともかく確かに代えの服はないのだ。
「魔法で綺麗にしてるわ」
「魔法で?」
 ルイズの疑問に、ノルンは頷いて答える。
「あたしは風の妖精よ? 風の力で綺麗にしてるわ」
「オゾン洗浄ってやつか?」
「それなら空気で洗えるね。まあ、精霊魔法だから空気で隅々まで綺麗にしてるってことかな?」
「その通りね」
 風の精霊なら、空気そのもの。
 生地を傷めずに、汚れだけ落とせそうだ。
 意外に便利かもしれない。 
 今度、ノルンに俺の服も洗ってもらうかな。
「じゃあ、ノルンどんな服がいいのか見に行きましょう」
 ルイズはそういうとノルンを連れて行ってしまう。
 やはり服となればたとえ他人の服でも気になるのが女の子なのだろう。
「サイト君、僕らも行こうか」
「ああ」
 そう言って、二人の後についていくのだった。
 その後、ノルンは三着の服を仕立てた。
 緑のワンピースと、魔法学院の制服と同じデザインの服、あとは薄い青のドレスだ。
 ワンピースは今着ているのとほぼ似たデザインのもの。まさに代えの服である。
 魔法学院の制服に関しては、着てみたかったとの事。ちっちゃな学生の誕生だ。
 ドレスに関してはルイズの提案。
 せっかくだから可愛いのを仕立ててもらおうというのだ。
「しかし、これらで二十エキューか。良い値になったな」
「マスター、大丈夫なの?」
「大丈夫。こう見てても無駄遣いはしないから結構、お金はあるんだよ」
 毎月、実家から生活費が送られてくるが、その半分以上は手を付けずに持ち越しなのだ。
「帰りに寄って、仕立ててもらった服を持って帰らないとね」
「うん!」
 ノルンは嬉しそうだ。
 やはり、女の子には笑顔でいてもらえると嬉しい。
「ねえ、アレス。わたし、服はいいからアクセサリー欲しいな」
「あ、俺も服が……」
「えっと、ルイズは分かるんだけど、どうしてサイト君が便乗するのさ?」
「俺だって、この服のままじゃ嫌だぞ」
「気持ちは分かるんだけど、たぶん今着てるのが一番いいよ?
 ルイズ、サイト君の服の生地触ってみて」
「ええ」
 俺に言われるがままに、サイトのパーカーを触るルイズ。
 そして驚くように言った。
「何、この生地! とても肌触りがいいわよ!」
「へ? そうなのか?」
 ルイズの反応に驚いたように、サイトは言う。
「そりゃそうだよ。大量生産で作れるパーカーでさえ、こっちの服以上に着易いはずさ」
 俺は子供の頃から着てるから慣れているが、サイトがこっちの服を着るとなると若干違和感があるはずだ。
「でもよー、俺だってずっと同じ服って汚いって思うわけさ」
「それなら、わたしが買ってあげるわ。サイトには出来るだけ快適に過ごしてもらわないとならないし」
「お、サンキュー。助かるわ」
 という事で、ついでにサイトの服も仕立てることになった。
 先に、ルイズのアクセサリーを見る。
 ルイズに買ってあげたのはシルバーのチェーンだ。
 細かく絵が彫られていてなかなかいいデザインである。
 ちなみに、選ぶのは俺ということだったので、それを選んだ。
「アレス、ありがとう! 大切にするわ」
 そういうとルイズは、手首にチェーンを巻きつける。
 この手のアクセサリーは首に掛けても手首に巻いても様になるのだ。
 手首につけたチェーンを嬉しそうに眺めるルイズ。
 買って良かったと思う瞬間だな。
 次にサイトの服を仕立てに行く。仕立てる服は、今来ているものとほぼ同じものだ。
 さすがに同じ生地はないため近い生地となるが、仕立てて金額がなかなかに高かったが。
 あとは予備としてシャツとスラックスを購入。
 こちらは学院と似た感じになっているが、スラックスはジーンズの色に近いものにしてある。
 それらを買うと、俺たちは昼食を取ることにしたのだった。
 昼食が終わり、適当に街を歩くと、武器屋を見つけた。
「そう言えば、サイトってナイフしか持ってないわね」
「ん? ああ、まあ特別困ってないしな」
「でも、せっかくなんだから剣くらい持ったら? あまり高いのは買ってあげられないけど」
「うーん」
 サイトは剣と聞いて少し悩んでいた。
 正直、サイトのルーンならどんな武器でも使いこなすだろう。
 悩んでいる理由は、武器を持つことじゃないか?と感じてる。
「サイト君、別に武器を買うって言っても護身用だと思えばいいさ。
 この前みたいにルイズに何かあって助けるときにナイフだけじゃ心もとないよ?」
「そうか……。どうも、この前の戦争での感覚が抜けて無くてさ。
 まあ、護身用なら確かにあってもいいと思うよ」
「じゃあ、決まりだね」
 武器屋に入ると、主人が若干馬鹿にした面持ちで俺たちに声を掛けてきた。
「貴族様が、剣をお買い求めで?」
「彼の剣が欲しいんだ。出来るだけ丈夫な奴」
「へえ、ならこれは如何でしょう」
 そう言って出したのは立派な大剣だった。
「あら、とても立派じゃない」
「ああ、何かすげーって感じがする」
 そういうサイトとルイズを見て、店の主人がニヤリと笑いながらうんちくを言い始める。
 店主が言うにはゲルマニアの高名なメイジが鍛えた剣らしい。
 ルイズもメイジが鍛えたと言うのが気に入ったのか、その剣をマジマジと見る。
「その剣はやめた方がいいよ」
 二人が興味深々で見ているところを、俺が水を差した。
「え? なんで?」
「まず、メイジがどんな事をするか想像してごらんよ。
 たまにこっちにもいるけど、平民相手にメイジが作ったとだけで高く買わせる傾向があるでしょ?
 第一、ギーシュだって剣くらいは錬金出来るしさ。
 主人、それってゲルマニアの商人から買ったもの?」
「へ、へえー。これはゲルマニアの商人から、高名なメイジがと」
「何かそのメイジが鍛えたという証書みたいのはある?」
「い、いえ……」
 俺が突っ込みを入れると、徐々に自信が無くなっていくのが分かる。
 そもそも剣を扱っているのに、剣の目利きが出来ていないのではないだろうか?
 俺も軍人の端くれだから分かるが、平民の部下に持たせる武器としてはこれはない。
 まず装飾が多すぎるのだ。
 家にも装飾品があるが、それらと大して変わらないのだ。
「ルイズ、こんな感じの剣って家に飾られてない?」
「え? そう言えば、似たような綺麗な剣が飾ってあったりするわ」
 腕を組んで、人差し指をあごに当てながら答える。
「でしょ? 試しにディテクトマジックを掛けてみよう」
 俺はそういうと剣にディテクトマジックを掛けて見る。
 確かに魔法で作られたらしいものの、固定化も最低限しか掛かっていない。
 加えて宝石もどうやら偽物っぽい。
 下級貴族が見栄で飾るような剣だろう。
「主人、それ、装飾用の剣だよ」
「……。そうですか」
 主人はそういうと肩を落として、大剣を店の奥に持っていくのである。
「おう、若ぇのになかなかいい目をしてるじゃねえか」
 どこからともかく、そういう声が聞こえてきた。
 辺りを見回すが、それらしい人がいない。
「誰だい?」
「俺か? 俺はデルフリンガー様よ!」
 セール品の剣が一本金属音がかみ合う独特の音を立てながらしゃべっている。
「剣がしゃべってる!」
 サイトは驚いたように言う。
 まあ、剣がしゃべるのは確かに驚くだろう。
 俺たちの世界でも珍しいには代わりが無い。
「デルフリンガー?」
 ノルンが、そういうと何やらうーんと、腕を組んで考え出す。
「なんだったかなー」
「まあ、後で思い出しなよ」
 俺はそう言うが、実は知っていた。
 ガンダールヴを調べれば出てくるのだ。デルフリンガー、初代ガンダールヴが使用した剣である。
 正直、こんな武器屋で売っているとは思いもしなかったから驚いたが、これはラッキーだと思った。
 売れることは無いだろうが、この剣をここで手に入れられるとは。
 俺も伝説だから存在が怪しかったが、しゃべる剣がわざわざ虚偽を言うこともあるまい。
「デルフリンガーはインテリジェンスソードなんだね?」
「おうよ! 俺はインテリジェンスソードさ。まあ、見たとおりの姿だけどな」
 デルフリンガーは自分の錆びた姿を自虐するようにいう。
 もし伝説の剣なら錆びているのは不自然だが、磨ぎなおせばいいだろう。
 もしかしたら剣自体に特殊な能力があるのかも知れない。
 俺はせいぜい魔法を無効化するくらいしか知らないが、錆びていてもその能力だけでサイトには十分過ぎる力だ。
「おい、デル! お客様だぞ、もう少し言葉遣いを考えろ!」
「なんでえ! そのお客様に武器の利き目で負けたの誰だよ!」
「っく! この剣の癖に生意気な!」
「その剣に言い負かされるようじゃ、まだまだだな!」
 剣と主人が言い争いを、サイトは呆然と見ていた。
 サイトに俺は進言する。
「サイト君、この剣ならどうだい? 叩くにはいいんじゃないか?」
「おい! 兄ちゃん! 俺は剣だぞ! それを叩くたぁどういうこった!」
「まあまあ。サイト君、握ってみたらどうだい?」
「あ、ああ」
 サイトは俺に勧められるままに剣を握る。
 すると、デルフリンガーが声を上げて驚いた。
「何だ、お前使い手か!」
「使い手? 使い手ってまさか……?」
 サイトも使い手の意味が分かったのか、自分のルーンを見てから、俺の方を確認するように見た。
 俺もそれに頷いて答える。
「お前、俺を買え!」
「よし、買った! ルイズ、俺、この剣にするよ」
 サイトがルイズにデルフリンガーを見せると表情が怪訝だった。
「これにするの?」
「ああ、これでいい。だろ? アレス?」
「そうだね」
 俺がそういうと、何かを考えてルイズは財布を出す。
「主人、あの剣はおいくら?」
「あれでしたら、百エキューでいいでさ」
「それじゃ、頂くわ」
 そういうとルイズは、百エキューを渡すのだった。
 剣を買った後は、ノルンの服を受け取って学院へと戻る。
 その帰り道、俺はデルフリンガーに尋ねたのだ。
「デルフリンガー、君はサイト君を使い手と呼んだね?」
「おう! 使い手は使い手だからな」
「それって、ガンダールヴの事なんでしょ?」
「何だ、兄ちゃん? 随分と詳しいな……。そうよ、俺様は……」
「そうよ! 初代ガンダールヴが使ったといわれてる剣がデルフリンガーじゃない!」
 デルフリンガーが自分のことを話そうとした時に、ノルンがそれを遮るのだった。