死の先に待っていた新たな世界
第13話


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 会議後、俺は父さん、ヴァリエール公爵、マザリーニ枢機卿、マリアンヌ皇后、アンリエッタ王女で話し合いが行われた。
 本当は、俺が会議の意見をここで述べる予定だったが、思わぬアンリエッタの声にその必要は無くなった。
「しかし、驚きましたな。まさか姫殿下が、自ら前線に赴くと言うとは」
「あ、あれはわたくしも勢いで言ってしまったものです。
 ただ、あのままでは収集が付かないのも確かでしたので」
「とは言え、勇敢になられましたな」
 それには俺も同感だった。
 さっきまで相談を受けていたのは、アンリエッタと言う一人の少女だった。
 しかし、今はアンリエッタ王女と言う責務を背負っている。
 責務を全うしようと言う姿は勇敢以外何者でもない。
 一見すると無謀だが、要は周りがしっかりとサポートすれば言いだけの事だった。
「アレス君、君は会議の間何かを考えていたようだが、何かいい案があるかね?」
 マザリーニ枢機卿が早速尋ねてくる。
「ええ。現在の戦力で巻き返しを図る策を練っていました」
「話してみなさい」
「はい」
 会議で考えていたことを皆に話し始める。
 現在の戦力が分散していることに敗退の原因があること。
 戦力を集中させることによって勢いで敵を退けること。
 守る砦も主要な箇所のみ。
 攻め入るときは、敵の捕虜からレコン・キスタの傭兵に成りすまして情報を下から混乱させること。
 情報の混乱は例を挙げると次のような感じだ。
 実際に攻めたい場所は敵戦力が集中しているため、落とすのは難しい。
 そのため、わざとその場所に連合軍が全軍を持って落としに来るという偽りの情報を流し、手薄になる拠点を一気に潰すのだ。
 向こうはさすがに全軍で攻めてくるという情報に偽りがないか確かめるだろう。
 そこをゴーレムを使った陽動などで数をごまかし、敵に全軍で攻めてくるというような錯覚を起こさせる。
 手薄になっているとは言え、他の拠点が攻められているという情報が入ればまた混乱が生じる。
 あとは、バリエーションを増やせば攻め方はいくつも出来るはずだ。
 ちなみに、情報戦はいかに偽情報を信じさせるかが勝負になる。
「アレス、お前は何という考えを。私はそのような戦法を教えた覚えはないぞ」
「はい。私はただ、どうしたらレコン・キスタを落とせるかと考えてみた結果です」
「しかし、そうとは言え、なかなか有効な手段だ」
 あとは細かい戦力分析が必要になる。
 こちらの残存戦力で、どれだけ戦えるか。
 武器も改良する必要があるな、そうそう。
「私が開発した手投げ弾ですが、あれを改良して使えないでしょうか?」
「改良?」
「はい、今は約五秒後に爆発するよう調整してますが、それを一秒足らずで爆発するように改良します」
「危険ではないか」
 そのまま使えば危険すぎる。
 だが、別の用途に使えばそうでもない。
「点火用の穴は、人間があけるのでなく自動で行いましょう。棒つきの蓋を用意して……」
 そうして、俺は話した。
 手投げ弾を改良した、投下爆弾の発想を。
 この世界でも熱気球の考えは使えるのだ。
 手投げ弾を数個つなげた小さい熱気球を用意し、時間にして一時間くらいで油が切れて落ちるようにする。
 当然、括りつけた手投げ弾は落下して、地面や建物に落ちるだろう。
 微量な風石でも使って、進む方向を決めてあげればいい。
 これで無人で空からの奇襲が可能になる。
 空戦は向こうの方が有利だが、こんな方法での攻撃は考え付かないはず。
 そうすれば虚を突いての大規模攻撃が出来る。
 もしかすると、攻め入る必要も無いかも知れない。
 成功すればの話だが。
「恐ろしい考えだ。だが、その方法ならレコン・キスタを一掃することも出来る」
「うむ、確かにだ。マザリーニ枢機卿いかがですかな?」
「私もその方法で賛成ですな。さすがに、卑怯と言われそうですがまあ何とかなるでしょう」 
 それからは細かい話が、マザリーニ枢機卿、ヴァリエール公爵、父さんの三人で行われることになった。
 一応、マリアンヌ皇后は口出しはしないものの状況を知っておく必要があるといい、話に参加する。
 俺とアンリエッタはもう良いという事で退室になった。
 
 俺はアンリエッタと共に、王族と王族が招待した客人だけが通されるバルコニーに来ていた。
 時間はだいぶ過ぎており、夜だ。
 バルコニーからはいくつかの明かりが灯った建物が見える。
「あなたって軍師に向いているのかも知れないわ」
「軍師、ね」
 言われて見ればそうかもしれない。
 何だかんだ言いながらも、軍事に首を突っ込んで、意見を言う。
 武器の開発、改良をしてるし。
 好きなのかも知れない。こういったことが。
「あの子は、あなたに戦いは似合わないって言ってたけど。わたくしは違うと思うわ」
 ルイズか。
 俺はどうしたいんだろうな。
 ルイズに、言い聞かせるように死を語り、強く成れという。
 俺はルイズを愛している。それは相手の幸せを願うからこそ。
 だが、俺はルイズを果たして幸せに出来るのだろうか。
「アレス? どうしたのかしら? 暗い顔なんかして」
「いや、なんでもないよ。ちょっと、考え事を、ね」
「そうなの? そう言えば、ルイズは学院ではどうしてるのかしら?」
「ルイズは……」
 魔法学院での出来事や日常を話すとアンリエッタは羨ましそうに聞いていた。
 そして、今更ながら気が付く。
 俺がこの子を戦地に送るよう仕向けたんだなと。
 この事が余計にルイズを悲しませることになるかも知れないことをぼんやりと考えていた。
 アンリエッタと別れて、俺は用意されている部屋に戻る。
 学院には明日、戻ることにしていた。
 朝から出ても、着くのは二日後だ。
「アレス、起きているか」
 部屋のドアが叩かれた。父さんが来たようだ。
「起きてます。どうぞ」
 そういうと父さんは、部屋に入ってきた。
 俺は椅子を用意して、向かい合う形で座る。
「父上、どうされたのですか?」
「アレス、お前を姫様の部隊に推薦したいのだが、いいか?」
「姫様の部隊に? 私をですか?」
「ああ。姫様が率いる部隊はアンリエッタ連隊と名づけられる。
 その第一大隊の隊長をお前に任したい。
 部隊はお前が手塩を掛けて育てたものを連れて行け」
 願ったり叶ったりというところか。
 俺がアンリエッタを戦場に送るようなものだ。断る理由は無い。
「わかりました。私の力を存分に発揮いたしましょう」
「いい返事だ。
 そして、ヴァエリール殿の娘のルイズ嬢だが、ヴァリエール殿の推薦でお前専属の衛生兵として付けたいらしい」
「ルイズをですか!」
 これには本気で驚いた。
 俺が戦場に出ることはあっても、ルイズを連れて行くことになるとは思わなかったのだ。
 いや、待て。
 それだけじゃない。ルイズが来るとなればサイトもじゃないか。
 彼はこの世界の人間じゃない。
 ましては、あのルーンの力もある。
 戦場に出すのは、その力をアピールすることになり、とても危険じゃないか?
「何でも、ルイズ嬢からヴァリエール殿に手紙が来たらしくてな。
 アレスが戦場に出るなら自分も行くと、言っているらしい。
 しかも並々ならぬ気迫が手紙から感じるらしく、下手にそれを退けるわけにも行かないと判断したと聞いた。
 アレス、お前はなかなか愛されているじゃないか」
 そういうと父さんは俺の肩に手を置いた。
「父としても、お前を誇りに思うぞ。
 この戦場で手柄を上げて、お前の力も示してやれ」
「はい」
 俺は返事をするのが精一杯だった。
 だが、その返事でも十分なのか、父さんは立ち上がりドアに手を掛けた。
「出発は七日後。一度学院に戻って仕度をし、家に戻ってきなさい」
「わかりました」
 そういうと父さんは部屋から出て行くのだった。
 俺は、この事態に戸惑っていた。
 ルイズを戦場にだって?
 本当に連れて行っていいのか?
 だが、あのヴァリエール公爵をも説得してしまう手紙の内容が気になる。
 内容如何によっては俺の説得でも無理だろう。
 そうなると、一度、ルイズと話してみないとわからない。
 どんな覚悟を持って、言ったのだろうか。
 俺はベッドに寝ると、思考をめぐらせながら眠りへと付くのだった。
 学院に戻ったのは二日後の朝だった。
 自室へと戻る。
「マスター、お帰り。会議はどうだったの?」
 ノルンが明るく、出迎えてくれた。
 何かほっとする。
「ああ、俺も戦場に出向くことになった」
「ルイズもでしょ?」
 悪戯っぽく笑うノルン。
 この笑顔は明らかに一枚噛んでいるという雰囲気だ。
「何か知ってるのか?」
「だって、落ち込むルイズを励ましてたのあたしと、サイトだもん。
 全く、マスターは女心がわかってないのね。
 女はね、どんな時でも好きな人と一緒に居たいの。そこが戦場でもね?
 本当はマスターが行かないのが一番いいんだけど、そうは行かないもの。
 まあ、それを後押ししたのはあたしとサイトだけど」
「何で、そんなことを」
「サイトがね、そんなに好きならアレスがどこに行っても付いていくしかないって言うんだもの。あたしも驚いたわ。
 でも、それ聞いて、あたしもその通りだと思ったのよ。
 だから、二人して押したって訳」
 なんてこった。
 俺がアンリエッタに進言した事と、ほぼ同じ事をサイトが言っていたのか。
 しかし、これを責める権利は俺には無いな。
 だが、待てよ?
「サイトは自分が戦場に出ることになるってことは考えてないのか?」
「その辺だけど、これからアレスに世話になるから貸しくらい作っておこうってことになってね」
 サイト、君はなかなか図太いな。
 現代日本人の考え方なら、本来は戦場に行こうとは思わないはずだが。
「アンリエッタといい、ルイズといい。どうもトリスティンの女の恋の力は凄いな」
「マスター、女の心を舐めたらダメよ?
 きっかけがあれば、女はこの人って決めた人にとことん付いていくんだから」
 決められたのか、俺は。
「それに、もしアレスが死ぬような事があっても、ルイズが自分で看取れる方がいいって」
「そうか」
 そこまで覚悟があるのか。
 ルイズはやっぱり強い。
 俺なんかには勿体無いと、本当に思う。
 そんな子に想われているなんてな。
「ルイズに会ってきたら?」
「そうだな」
「じゃあ、いってらしゃい」
「ノルンは来ないのか?」
「邪魔したくないから、ね?」
 そう言ってウィンクをするノルン。
 俺は苦笑しながら、ノルンの気遣いに感謝して部屋を出るのだった。
 
 ルイズの部屋に行く途中、サイトにあった。
「よう、アレス。戻ってきたんだな」
「やあ、サイト君。話は聞いたよ」
「そうか。ルイズのところに行くのか?」
「そうだよ」
「その前にちょっと付き合ってくれよ」
「いいよ」
 そういうと俺達は、広場に来た。
 まだ朝早いためか人はいない、その一角にあるベンチに並んで座った。
「お前、ルイズをどう思ってるんだ?」
「僕は、彼女を愛しているよ」
「そうか。じゃあ、何で側にいてやろうとしない? どうして、支えてやろうとしないんだ?」
 サイトはそういうと俺を睨むように見ていた。
「ヴァルガード家の長男として責任だよ」
「だから、何だってんだよ! ルイズ、あいつ泣いてたんだぞ?
 ケジメはつけなきゃって、わがままを聞いてもらったから困らせられない。
 でも、本当は居て欲しいって!」
 サイトは俺の胸倉を掴んで言う。
 そうか、ルイズと同じ部屋にいるサイトは、ルイズから話を聞いたのか。
 まだ出会って十日も経っていないのに、いい関係をお互い築いているのかもしれない。
「強くならなきゃならないんだよ。ルイズは」
「それと、一緒にいないのは関係ないだろう!
 だいたい、ずっと一緒だったらしいじゃないか。
 それなのに、どうして突き放すようなやり方をするんだ!」
「一緒に居ても、僕がいつ死ぬかは分からない。
 ルイズにはそれを超えられる強さを身につけて欲しいんだ」
「どうして、死ぬことばかり考えているんだよ!」
「話したよね? 僕が前世の記憶を持っているって。
 詳しくは話してないけど、飛行機事故だったんだよ。
 大きいプロジェクトを抱えたまま、僕は飛行機事故で死んだ。
 平和な暮らしをしていたって、何がきっかけで突然死ぬのかなんてわからないんだ」
「そ、そうだけどよ」
 俺が前世で事故死していることは話している。
 だが、それが飛行機事故だとすると、もう自分の力じゃどうにもならない。
「サイト君、君はルイズを想ってくれているんだね」
「親切にしてくれるからな。
 寝床だって、初日こそ床で毛布だけだったけど、翌日から平民が使う布団を用意してくれた。
 分からないことは何でも聞いてと言ってくれた。
 俺からしても優しい、いい子だ。
 だから、そんな子に悲しい思いをさせたくないんだよ」
「そうか、ありがとう」
 ルイズ、君は人から愛される子かもしれないな。
 俺が導いて来たが、もう俺の手は必要ないように思える。
「お礼はいいから、ルイズをちゃんと見てやれよ」
「そうだね。それじゃ、ちゃんとルイズに会って話さないとだ」
 そう言って俺は立ち上がる。
「そうだ。一つ聞いておきたいんだけど、サイト君。戦場に君も出ることになるかも知れないことにはどう考えているんだい?」
 ノルンからは聞いている。
 しかし、本人の口からちゃんと覚悟を聞いておきたい。
「正直に言えば、怖い。だけど、ルイズを奮い立たせちまったのは他でもない俺だ。
 あんまり後先考えずにものを言っちまうのがいけないんだけどさ、それでもあの時ルイズを励ますには、ああ言うしかなかった。
 言ったからには、ルイズがアレスに着いて行くと言うなら、俺も行かないとな。
 じゃないと、無責任だし。何より、ルイズだけ行かせて俺だけ安全な場所ってのは情けないじゃないか。
 そんなのだけは嫌なんだ。言うだけ言って、後知りませんってのはさ。
 まあ、ルイズに凄く親切にしてもらってるから、その恩もあるかな?
 アレスにも貸しを作っておきたいし」
 サイトは、十七歳の普通の高校生だと聞いた。
 けど、サイトのような若者を見ると、まだまだ向こうも捨てたものじゃないと感じる。
「そうか、君の思いを聞けてよかったよ。借りは、君を元の世界に戻す形で返すよ」
 ここでの体験が、きっといい意味で彼を大きくするだろう。
 俺は元の世界に戻れないが、サイト君は戻る権利がある。
 彼を返すその時まで、絶対に死ねないな。
 サイトが命の危険を押してまで、ルイズに付き合ってくれるんだ。
 俺も命がけで返さないとな。
「臭いことだって笑わないのか?」
 サイトが真顔で聞いてくる。
 それは向こうの世界の人間なら笑うようなことだったからだろう。
「向こうの世界だったら笑う人もいるだろうね。ここはハルケギニアだよ?
 君のその思いはトリスティンの心ある貴族にも通じる。
 サイト君が友人で、僕も誇りに思えるよ」
「何だよ、何かくすぐったいじゃないか」
「それだけの決意があったってことさ。それじゃ、僕はルイズに会いに行くよ」
「ああ」
 その時、ちょうど洗濯物を持ったシエスタが通りかかった。
 結構な量の洗濯物である。
 俺とサイトを見つけると、挨拶をしてきた。
「アレス様、それにサイトさん。おはようございます」
「おはよう。相変わらず精が出るね」
「あ、はい! あ、サイトさん、また洗濯を手伝ってもらえます?」
「ああ、いいよ。それじゃ、アレス。ルイズを泣かしちゃダメだぞ」
 そう言いながら、サイトはシエスタと共に洗い場へと向かっていく。
 何だ、いつの間にか仲良くなっているんだな。
 こうしてみると、なかなか似合いの二人じゃないか。
「さて、行くか」
 二人を背に、俺はルイズの部屋へ向かった。
 ルイズの部屋の前に着いて、俺はドアをノックする。
「僕だよ、アレスだ」
「アレス? 入って」
 ドアを開けて中に入る。
 ルイズはベッドの上に座っていて、やや赤い顔をしていた。
 入ってきた俺に、隣に座るようにと自分の横を勧めてきた。
「あ、あの、ごめんなさい。あの日に、ケジメをつけるって言ったのに」
「いいよ。驚いたけどね。
 でも、良く公爵様を説得したと思うよ。しかも手紙で」
「ふふふ、まさか本当に許可が出るだなんて思わなかったのよ?」
 嬉しそうなルイズ。
 本当に一体、どうやって説得したのやら。
 聞きたい反面、その内容が怖い。
「何でも、姫様の部隊なんですってね? アレスと一緒なのも嬉しいけど、姫様とも一緒だなんて嬉しいわ」
「遊びに行くわけじゃないのはわかってるよね?」
「ええ。でもわたしだって、癒し手の二つ名を持っているのよ。
 水の魔法は使えないけど、秘薬を使った治療や看護くらい出来るわ」
 確かに、秘薬の知識があるのは頼もしい。
 俺の事があったため重傷患者の傷を癒す秘薬の研究が飛躍的に進んでいるのだ。
「見るに耐えないかも知れないんだけど、覚悟はあるんだね?」
 どんなに秘薬の知識があっても現場はやはり戦場だ。
 俺の時以上の、重傷患者や死人だって見るかも知れない。
「アレスと一緒ならどんな場所でだって大丈夫。
 どんな重傷な人だって治して見せるわ!
 それに、ただ待ってるだけなんて嫌だもの」
 そういうルイズは吹っ切れた顔をしている。
 迷いが一切無かった。
「いい使い魔を召還したね」
「サイトね? ホントよ。もしアレスが居なかったら、彼に惚れてたかも知れないわ」
 からかう口調でルイズが言う。
 まあ、それもいいかな?と俺は想ったりもするが、それじゃ俺も無責任だ。
 ルイズの幸せを願う以上、今のルイズの幸せは俺が対象なのだから。
「そこまでかい?」
「サイトが真剣に、わたしに言ってくれたのよ。そんなに好きなら放しちゃダメだろ!って。付いて行ってでも側にいないとダメだ! って。
 ノルンも後押ししてくれたし。
 もう、わたしは迷わないわ。ずっとあなたの側にいるから」 
 そういうと、ルイズは俺に寄りかかってくる。
 俺はルイズの右隣に座ったため、肩を抱くには至らない。
「わたしが、あなたの左手になる。あなたを支えるの。
 だから、わたしをいつも側に置いてほしいわ」
 ルイズが俺の左手を取って言う。
 なんて、健気な子だ。
 こんな子を手放したら、罰が当たるかも知れないな。
「そう言えば、もし僕が死ぬことがあっても、看取ってくれるんだって?」
「そうやって意地悪なことを言うのね。でも、その覚悟もあるわ。
 前みたいに、わたしの知らないところで死ぬような目に合わしたくないし、何よりもわたしの手の届かないところで、そんな事が起きるのは嫌だもの」
「そうか」
「あの二人のおかげで、その覚悟が出来たんだけどね。
 ホント、あの二人には感謝しても足りないわ」
 ルイズの覚悟は、二人がくれた勇気だな。
 自分を貫く強さ。
 ある意味、ルイズは強さを貰ったのかも知れない。
「そこまで覚悟が決まっているなら、しっかり頼むよ?」
「任して、あなたとあなたの部下はわたしが癒すから」
 こうして、俺はルイズとサイトと共に戦場へ行くことになった。
 二人に負担を掛けてしまうが、二人の意志は尊重しようと思った。
 その後、俺は父さんとヴァリエール公爵から手紙を貰った。
 正式に学院を休学する届出である。
 それを提出したとき、オールド・オスマン氏は苦い顔をしていた。
 子供たちを戦場になど、送りたくないという感じである。
 俺達が決めたことに、反対も出来ない。
 だから、オールド・オスマン氏は一言、俺達にこういった。
「月並みじゃが、絶対に生きて帰きなさい」
 それが、学院長としての精一杯の真心だった。
 ロングビルには、帰ってきたから新魔法について教えると伝えたが、あまり気にしなくていいと言われてしまった。
 どういうことだろうか?
 休学の届出を出し終わると、俺達は荷物を必要最低限まとめるのだった。