死の先に待っていた新たな世界
プロローグ


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 全てが赤く燃えていた。
 日本から中国への出張の中、俺は墜落事故にあったのだ。
 墜落したのは中国の山岳部らしい。
 最後に見たのが山だったから間違いないだろう。こんな山の中ではとても救助が来れる場所ではない。
 そして、何よりも俺の体は飛行機の扉で腹から下が切断されていた。
 不思議と痛みは感じない。それで分かった。
 俺は死ぬんだと……。
 幸いなのが、家族がとっくにいないことだ。
 両親は俺が二十五の時に交通事故で亡くしている。
 元々、一人っ子だった俺には俺が死んでも悲しむ家族がいない。
 それが唯一の救いであった。
 しかも三十を目の前にして、恋人すら居ない。
 いたらその人がとても悲しんでいただろう。
 仕事の方は大変だろうな。
 それなりに大きなプロジェクトを引継ぎもなにも無しでいなくなるわけである。
 大いに業務に支障をきたすだろう。
 でもいい。
 それすら時間でどうにか解決するだろう。
 所詮、悲しんでくれる人間などいるわけがないのだから。
 だからだろうか?
 俺は目を閉じるとそのまま、死の待つ闇へと身を任せる事が出来た。。
 長い間、闇の中をさまよっていたと思う。
 時間の感覚は、無い。ただ闇の中にいるだけだ。
 そこに小さい光を見つけて、次の瞬間、俺は目を覚ました。
 死んだはずなのに俺は目を覚ましたのだ。
 だが、どうもおかしい。
 体が妙に軽い。そして、誰かに抱えられている。
「エレナ。良くやった! 男子じゃないか!」
 そう言葉が聞こえてきた。
 英語に近いが英語ではない?
 聞いた事のない言葉だ。
 しかし不思議と俺は、彼らの言葉を理解していた。
「はい……。あなた、我がヴァルガード家の跡取りです」
 ヴァルガード?
 跡取り?
「何とも可愛らしい四肢をしているのだろうな。この子は。だが、瞳はそれでも意志が強い」
「あなたに似るのかも知れませんね。“風神”のあなたに……」
 そうか……。俺は生まれ変わったんだな……。
 この二人の会話から、それを理解することが出来た。
 俺の第二の人生。
 しかも前世の記憶とやらが残ったままだ。
 そう理解した時、俺は父親らしい人に高々と掲げられてこう言われた。
「お前の名は、生まれる前から決めていたのだ。男子ならそう、アレスだ。アレス・ジルアス・ド・ヴァルガード。それがお前の名前だ」
 アレス・ジルアス・ド・ヴァルガード。
 これが俺の名前になるのか。
 前世の記憶をもった第二の人生。
 こっちでも、また寂しい最後になるのだろうか?